A Black Cat house keeper 〜ブラックねこめいど〜 作:驟雨さま あたしの名前は月島澪(れい)。 でもこれは日本へ来てからの名前で、本名はアール・ヴィクトリアっていうんだよ! なんで日本に来てからだって? 早い話、あたしは・・・なんと人間じゃないのだ! ・・・そこっ! 今首をかしげたあなた! 日本とあんまり関係ないけど気にしない! うーんよく分かんないけど日本(こっち)じゃ私みたいなネコ耳女の子も普通に生活してるし、 あたしはてっきり珍しくてなんか迫害されちゃうんじゃないか!? なんて思ってたけど、 派遣されてからはもうなじんじゃってしかもご主人様は優しいし、悪いとこ無し! なんだよね〜。 あたしたちネコ耳を持った女の子はここ日本でメイドとしての役割を果たしている。 なんかすごくウケるのよね〜。なんでかしら? どこから派遣されてくるかは大人の都合で言えません!(あしからず) ただあたしの特別なとこは他のネコ耳っ娘と違って耳やしっぽの色が黒色をしてるってとこ。 純粋な黒じゃなくて、すこしだけ青も混ざってるかな・・。 髪も藍色で瞳はちょっと赤い。だから恐いイメージがあるんだよね。 しかも他にあたしと同じ色の娘は1人も居なくて、それがちょっとさみしかったりする。 「さ〜てと! 説明もこのくらいにして、急いで買い物を済ませなきゃ♪」 ややスキップ気味で歩道を進んでいく。 すれ違う人の中にはやっぱりあたしと同じネコ耳を持った娘もいる。 ネコ耳っ娘はなにも女の子だけじゃなくて、稀に男の子もいたりする。 ただ男の子はネコっていうよりも狼って感じがするけど。 通称ネコ耳族。あたしたちはそう呼ばれている。 「やっほ〜、澪ちゃん!」 突然後方からあたしを呼ぶ声がした。 振り向くとそこには同じメイド仲間(造語)の鈴(すず)ちゃんがいた。 金色の髪を風で靡かせ、白いしっぽと耳を少しだけ揺らしながらそこに立っていた。 追いつくために走ってきたのか、やや息が荒れている。 「鈴ちゃん! あなたも買い出しの最中?」 「ふう・・そうよ。『も』ってことは澪もってことね。」 鈴ちゃんはやっと普通の呼吸のスピードに戻しつつあった。 「うん。」 「今日はスーパー混むわよ〜。○曜特売の日だからねこメイドが押し寄せてるかも。」 「もちろん知ってるわ。でもあんまりぐずぐずしていられないわね。行くわよ鈴ちゃん!」 「わっ、そんなに引っ張らないでよ〜・・」 あたしはぐいっと鈴ちゃんの腕を引っ張り、通りを疾走した。 メイドの特性・・・じゃなかったネコの特性なのか走る早さは人間よりもかなり速い。 「ご主人様のためにダッシュダッシュ♪」 空気を切裂き、 道行く人を高速で避けながら鈴ちゃんを放さないように走った。 案の定、スーパーは人間とネコ耳っ娘でごった返していた。 ネコ耳があるぶん、ネコ耳っ娘は人間よりも背が高く見える。 それにしっぽもかなり人間にとっては邪魔そうだ。 「ああん、そこのしっぽ邪魔よ!」 「私ネコアレルギーなのよ! ちょっと、こっち来ないで!!」 大声で叫ぶおばさんが人一倍に目立つ。 側に私と同じ格好をしたネコメイドが数人困った表情をしている。 ネコがたくさんいる社会にネコアレルギーなんてかわいそう・・。 2人はやっと入り口までたどり着いた。 入り口まで来るのにかなりかかってしまった。 「ありゃぁ〜。混んじゃってるね。」 「ちょっ、はぁはぁ・・。澪ちゃん、足速過ぎ。普通のネコメイドはそんなに速く走れないわよ・・。」 「ごめんごめん! だって、ご主人様のためだもん♪」 「・・・すごい執着力。でもあたしも見習わないといけないな。」 「うーん、なんか入れそうもないね。なんでこんなに混んでるの!?」 押し合いへし合いの混みよう。 今までこんなに人がいたことってあったっけ? ん・・・あ! そういえば! 今日はもしかしてハロウィンだった・・? 日本ってハロウィンに感心あるのかな? まあいいけど。 そんなことより! さっきから足を踏まれてて痛い・・・。 ああっ! もう、しっぽを掴まないでよ! ふにゃぁ・・力が抜けるぅ・・。 「澪ちゃん! ああ・・はぐれちゃった。」 その声にも気づかなかった。 気づいたのはやっと身体に力が戻ってきたとき。 手にはなにも握られてなかった。 その代わり、あたしのある部分が握られていた。 むにゅっ。 「!!!???」 身体に変な感覚が走る。 そう、ちょうど胸の辺り。 「へへ・・・ネコのお姉ちゃん、おっぱい大きいね。」 人と人の、ネコとネコの間に挟まれて苦しい中、 頑張って下を向くと、手を胸に伸ばし、もっ、揉んでる男の子がいた。 まだ小学生くらいの小さい子供だった。 「ちょっ・・あっ、な、何してんのよ!? あん!」 「へへ。こんな中じゃ逃げられないね。」 こっ、この生意気なガキんちょめぇ〜! と思う反面、まだ頭と身体に変な感覚が走っている。 「さ〜て、人目につくし、そろそろやめとくかな。じゃあねネコのお姉ちゃん。」 そういうと男の子は胸から手を放し、 その小さい身体を活かして人をかき分け消えた。 「ふにゃぁ・・・。な、なんなのよぉ〜。」 人込みから一時外れ、 鈴ちゃんとあたしは合流することができた。 「澪ちゃん、大丈夫? 顔がちょっと歪んじゃってるよ?」 「ふにゃぁ・・・。今までに無い感覚だよぉ〜。」 「ほらほら、服が乱れてるわ。仕えるものとしてそれじゃまずいでしょ?」 「あっ・・あ! いけない、あたしったら!」 あたしはあわてて服を直す。 ちょっと身体を見回すが、とくに問題はなかったが、 まだあの変な感覚が残っている。 まったく、なんて子なの。 今日はスーパーは諦めることにした。 本当に心残りだけどしょうがない。 だけどご主人様の大好物だけは買って帰ることにした。 そう、ブルーベリー。 「だけど澪ちゃん、今どきブルーベリーなんて売ってる場所ある?」 「フッフッフ。あたしだけの特別な場所があるんだ! ・・・知りたい?」 「うん、まあ同じメイドとしては知っておきたいわ。」 「じゃ、付いて来て。こっちよ。」 あたしは鈴ちゃんの手を握って導いた。 スーパーへ続く通りを逆方向に進み、 途中で細い道へ入った。 「澪ちゃん、本当にこんなところに・・・あ。」 「あるでしょ? ネコミミショップ。」 そうここはあたしたちの本部から送られてくる直送品を販売している裏の中の裏の店。 もちろん入れるのはネコ耳を持ったメイドだけ。 「こんなところがあったなんて・・。」 「あたしも知ったときはビックリしたけどここならなんでも揃ってるよ。ただ・・・ちょっと値が張るのよねぇ〜。」 そう言いながら2人で店の透明なドアを押し開けた。 軽く押すだけで自然に開いた。 「あ〜らいらっしゃ・・・なに、黒猫(ブラック)? フン、歓迎出来ないわね。」 「・・・・」 店員のその声を聞き、鈴ちゃんがあたしに小声で話しかけた。 「ちょっと澪ちゃん、これはどういうこと?」 「あたしのような黒猫は嫌われ者なの。もちろん、すべてのネコ耳族から迫害されてるわけじゃないけどね・・。 鈴ちゃんはそう思って・・・無いよね?」 「うん、あたしはそう思ってないよ。でも何で・・・」 あたしは一息おき、店員のほうをチラリと見ながら言った。 「鈴ちゃん、黒猫(ブラック)をあたしの他に見たことがある? いえ、無いはずよ。黒猫は取っても珍しい変種。 大抵のネコは白か・・・黒に近くても灰色か青。でもあたしはちょっと青みがかってるけど黒猫。 珍しい者はは嫌われる。どこでもいっしょなのよ・・・。」 あたしは俯きながら言った。 あの前向きで明るい性格はどこへやら・・・ 「それも・・知らなかった。でもあたしは澪ちゃんのこと大好きだよ。黒いからなんだっていうのよ。 澪ちゃんは澪ちゃん。でしょ?」 「・・・あり・・ありがとう。」 鈴ちゃんは優しくあたしの肩を叩いた。 長い藍色の髪が肩から前に垂れた。 同じようにゆっくりと瞳から涙が一筋流れるのも感じた。 買い物は鈴ちゃんが済ませてくれた。 どうやら迫害する店員も極一部らしく、 後に事情を知った店長が謝りに来たくらいだ。 「ありがとう鈴ちゃん。」 「いいのよ。あたしこそ澪ちゃんのこと、何も知らなくって・・ごめんね。」 ホントに、親友は絶対にもつものである。 今までに思ったことではあるが、今日このとき、しみじみと感じた。 「じゃあ澪ちゃん、あたしも買い物は住んだし、そろそろ仕事に戻るわね。」 「うん、今日はいろいろありがとう。」 「いいえ! また一緒にお買い物しましょ!」 あたしの仕えるご主人様の屋敷の前に帰り着いた。 鈴ちゃんは手を振りながらしっぽも振り、 耳をピンと立てながらあたしに背を向けて去っていった。 「ふう・・・さぁ〜て、あたしもいつまでもくよくよしてられないし、ご主人様のために おいしいブルーベリータルトを作らなきゃ!」 あたしは屋敷へ戻り、 ルンルンと厨房に入っていった。 作り中♪ ちょっと待ってね。 「さ〜て、できたわ!」 トレーにお皿に盛ったタルトと、ブルーベリー仕立の紅茶を乗せ、 いざご主人様の元へ! チャッ・・・ 書斎の戸を開けた。 「失礼します。ご主人様、午後のティータイムでございます。」 「おお、ごくろうだったなアール。・・・その飲み物は?」 「ブルーベリーを織り交ぜました、新紅茶でございます。」 「ふーむ、初めて見るな。(なんか毒みたいな感じがするが・・)」 「それではどうぞ、お召し上がりください。」 ご主人様があたしの作ったものをああっ、召し上がってる! なんて感動的なの・・・。 トレーをお腹の前に抱え、 勝手に感動に浸っているあたし。 「んん! これはおいしいな。」 「はっ、ありがとうございます! ご主人様にお褒めの言葉をいただけるとは・・光栄でございますぅ〜!!」 「うん、これなら子供にもオススメだ。」 「・・・失礼ですがご主人様、子供様とは・・・?」 「んん? 知らなかったのか。ついさっき客人を通してな。子連れの親子だ。私の、甥っ子だ。」 「承知いたしました。ではおもてなしをして参ります。」 「うむ。男の子でな。ちょっと気が強いところもあるがいい子だ。よろしく頼んだぞ。」 「畏まりました。」 あたしはゆっくりと部屋を後にした。 子供かぁ・・。そういえばさっきスーパーで会ったガキんちょ・・・。 胸を揉んで・・。ああっ、あたしったらはしたない。 ガキんちょなんていう言葉を思ってる時点ではしたないぞ。 チャッ。 今度は客室大広間へ入った。 さっきと同じタルトと紅茶を2人前トレーに乗せて。 「失礼します。お茶とお菓子をご用意・・・あっ!」 「ああ〜! さっきのネコのお姉ちゃんだ!」 そう、そこにいたのはスーパーで胸を揉んできた男の子。 この子がご主人様の甥っ子だなんて・・。 「あっ、・・冷静に冷静に。動揺しちゃダメよ・・。」 自分に言い聞かせながら広い部屋を進み、 ソファを迂回する。 途中反対側のソファに座る親子の子供の方を見てにこっと笑った。・・・つもりだった。 顔がちょっと引きつってしまったのだ。 「かわいいネコ耳族を雇ってるのね。」 男の子の母親がそう言ったときはその引きつった顔が直り、 本当の笑顔が顔に戻った。 ちょっとだけ頬が赤くなる感じがした。 「あのお姉ちゃん、おっぱいすごく柔らかいんだよ。」 男の子がまたこんなことを言っている。 母親が男の子を軽く叩いて注意していた。 「こら美喜。メイドさんに失礼ですよ。いくら仕える者とは言え、ちゃんとした人・・ネコです。」 「いいえ、お気になさらないでください。・・・どうぞ、こちらはブルーベリータルトと ブルーベリー風味の紅茶になります。」 「あら、ありがとう。珍しい品ですのね。」 「わたくしのオリジナル作品でございます。」 難しい(子供には)会話をそっちのけで、 美喜君はタルトを豪快にほお張っている。 「ん!! お姉ちゃん、これすごくおいしいよ!」 「あっ、ありがとうございます。」 初めて美喜君を見る目が変わったような気がした。 胸を揉まれたことなんて忘れるくらいうれしかったのだ。 「メイドの仕事、か。やっぱりご主人様に感謝されるし、 お客様を喜ばせる為にもこれからも頑張らなきゃ! って、ええっ?」 またあの感覚が体中を走る。 「むにむに〜。お姉ちゃんのおっぱい柔らかくってあったか〜い。」 部屋を出てちょっと考え事している間に、 美喜君がまたあたしの胸を揉んでいた。 もう。でも、ま、今日くらいは許してあげよっか。 あたしは美喜君のサラサラの髪を撫でながら思った。 これはあたしのほんの小さな成長なのかもしれない。 登場人物 月島澪 アール・ヴィクトリア 本作主人公、田代さんの原画、ブラックねこめいどです。 本当にすみません、ちょっと彼女にとってかわそうな設定にしてしまいました・・。 如月鈴 リン・アトラス メイドにお仲間は付きもの。 唯一・・じゃないかもしれないが、澪を心から理解している人物・・もといネコ。 ご主人様 澪に奉仕される側の人間。 彼は澪がとてもお気に入りのようです。 男の子 美喜君 まだ小学生なのに女の子に興味があるのか、 ひつようにに澪に絡んできます。 母親 (美喜君の) 美喜君のわんぱく振りにはいつも奮戦奮闘!? あとがきをやはり入れるべきか・・ おはよう、こんにちは、こんばんわ。 そう、すべてに対応出来る挨拶はやはり『Hello』しかないのでしょうか? えーと公表しました通り、まだまだ小説書きとしては未熟な作品ですが、 本小説を『風色の島』サイトに寄贈させていただきます。 最近は書く時間がより長くなってきました。 田代さんに何度も見ていただいた拙作の影響かもしれません。 いろいろそれで争いましたし・・・。(みなさんご存知の某サイトで) 推敲って本当に難しいということがわかりました。 ですが題名は本当にそのままで・・・。 それに性格、しゃべりかたなど勝手に私の考察で作ってしまいました。 しかもTSF以外のジャンルを描くのは初めてだったりします。 (かわいらしく・・描いたつもりではありますが・・・) 題名はねこめいど。でも作品中ではネコメイドになってますが、 あの絵のタイトルがブラックねこめいどだったので題名だけは平仮名なんですが、 小説では少々読み難い気がしたのでカタカナにしました。 (なんかメイド・ザ・ワールドを築き上げた感じがします(爆)) 投稿規定が無いのである程度自由に描くことができて楽しかったです。 萌え萌え〜なシーンもいくつかノリでいれちゃいました♪ ハハハ。 私はあの絵に心から惚れてしまったのでこんな大それたことをやるなどと言ってしまったわけです。 ですが、本当にこの小説を書くことができてうれしいかったです。 ここまで読んでくださった方々、そして田代さん、ありがとうございます!! 2004年 10月くらい 驟雨